日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。class A 薬局の仲間で、白澤薬局段上店(兵庫県西宮市)薬剤師の金光伴訓さんがお届けします。
『とんど焼き』
松の内が終わる1月15日、店頭に掲げていたしめ縄を外し、30代の若い薬剤師を連れ、近所の神社に出かけました。神社の境内では、地域住民の皆さんが交代で火をおこし、各家から持ち寄った正月飾りやしめ縄を焚き上げています。
この行事は、東北では「どんど焼き」、九州では「鬼火焚き」など、各地方でいろいろな呼び方があります。関西では「とんど焼き」と呼ばれています。年始に各家庭に来られた歳神様を、天界に戻られる15日にお見送りするという神事で、燃やした灰を再び各家に持ち帰り、家の四隅に撒くと、無病息災・家内安全の御利益があるとされています。
松の内や歳神様、勿論「とんど焼き」の意味など知らない若い薬剤師に、しめ縄が焚き上がる間に、行事の目的や言葉の意味を説明します。その間にも、高齢者、幼稚園児、両親に手を引かれる幼児など、さまざまな年代の人たちたちが次々に正月飾りを手にやってきます。
こういった古くから伝わる地域の行事を理解し、参加することで、薬局の中だけでは学べない、地域と繋がることことを若い薬剤師は学んでいきます。
2015年、厚生労働省は、規制改革会議の「医薬分業に薬局は十分な役割を果たしていない」という提言を受け、「患者のための薬局ビジョン」を発表し、当時57,000軒あったすべての薬局を、10年後の2025年に「患者本位のかかりつけ薬局」にすると提言しました。
「かかりつけ薬局」であれば、服薬情報の一元的かつ継続的な把握ができ、複数の医療機関を受診した場合でも、多剤・重複投与・相互作用の防止が行え、医薬分業が目指す安心安全な薬物療法を受けることが出来ると考えたからです。
しかし、地域住民が「かかりつけ薬局」を選ぶには、そこで従事する薬剤師との信頼関係が欠かせません。それは病気の時だけでなく、平時から築かれるものだと思います。
「今年も会えたねえ。元気だった?あ、灰はこれで拾うといいよ」
とんど焼きの火の周りで交わされる語らいを通じて、地域の方々との距離が一歩縮まります。信頼は普段の生活のほんの些細なことから始まっていくのだと思います。
今回で私のコラムは最後です。3年12回に亘りご拝読頂き、ありがとうございました。
text by 金光伴訓(かなみつ・とものり)
経済学部社会政策科卒。一般企業企画開発室を経て、薬学部へ社会人入学。在宅医療に取り組む中、社会福祉審議会で福祉医療計画策定に取り組んでいる。趣味は、映画・演劇・落語からラグビー・合気道と幅広い。
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