まちの薬局つれづれ日記 白澤薬局(兵庫県)vol.10

日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。class A 薬局の仲間で、白澤薬局段上店(兵庫県西宮市)薬剤師の金光伴訓さんがお届けします。


『演劇・舞台への招待状』

「おどる夫婦」「紅鬼物語」「ベイジルタウンの女神」「昭和から騒ぎ」。これらの名前を聞いて何かお気づきでしょうか?小説、映画の題名…いえいえ、実は演劇、芝居の演目名で、本年5月から6月に私が観に行った舞台です。

無類の映画好きである私なのですが、最近は舞台を観ることの方が多くなってきました。それは何故か。映画・舞台、いずれも美術や照明、音声、役者の演技などの総合芸術ですが、最大の違いは「やり直し」ができるか、できないかだと思います。映画はセットに合わせて、物語の順番もバラバラで演技をし、それを最後に編集をかけるため、何度もやり直しができます。これに対し、限られた空間・限られた時間で生で行われる舞台は、やり直しがききません。照明や美術も、役者が今行っている演技に合わせる。まさに全員が見事に揃わないと良い舞台ができないのです。その生の緊張感が、たまらなく観客を魅了するのです。

そして役者の演技、これは映画やテレビドラマとは明らかに違います。「カット」がかからない舞台では、瞬時に対応のできる演技が必要となり、役者の個性・才能が光ります。映画やテレビでは脇を固めている役者さんが、舞台ではその才能を惜しげもなく発揮して主役を喰うほどです。しかし、それでもとんでもないスターがいます。その一人が天海祐希さんです。過日観た劇団新感線「薔薇とサムライ2~海賊女王の帰還」で、男装の麗人として姿を現したときは、そのカッコよさに初めて鳥肌が立ちました。観客席からも「キャー!」という悲鳴が上がったほどです。

また舞台には、劇団を率いる脚本家の作家性が発揮されます。「ナイロン100℃」のケラリーノ、「イキウメ」の前川知大、「大人計画」の松尾スズキ、他にも三谷幸喜氏や蓬莱竜太氏など、それぞれの世界観が反映され、まるで物語を読んでいるかのようです。

今まで舞台を観に行ったことがない人は、ぜひ一度劇場に足を運んでみてください。きっとあなたの中の何かが変わると思います。



text by 金光伴訓(かなみつ・とものり)

経済学部社会政策科卒。一般企業企画開発室を経て、薬学部へ社会人入学。在宅医療に取り組む中、社会福祉審議会で福祉医療計画策定に取り組んでいる。趣味は、映画・演劇・落語からラグビー・合気道と幅広い。