伝統と革新の融合 筒井時正玩具花火製造所の花火

夏の風物詩である花火。今回は、今や珍しい存在となった国産花火の製造に取り組む、福岡県みやま市にある筒井時正玩具花火製造所の花火をご紹介します。

安価な外国産の線香花火の輸入によって経営が悪化し、廃業が決まっていた国内唯一の線香花火製造所(隈本火工・福岡県八女市)を廃業と同時に引き継いだのが、子ども向け玩具花火を製造していた筒井時正玩具花火製造所。3代目である筒井良太さんは、線香花火の伝統的な製造技術を継承しつつ、デザイン性に優れた日本でしか作れない花火作りに情熱を注いでいます。

左から、花富士・赤、花富士・青、吹き上げる 鯨花火 各495円(税込)。手前は、創業者の名前が付いた看板商品、線香花火 筒井時正 蕾(つぼみ) 8本入り 1,100円(税込)。公式サイト(https://tsutsuitokimasa.jp/)では、花火の材料や作り方に関する解説も見られます



写真にある、富士山形と鯨形のペーパークラフトのように見えるものも、れっきとした花火。富士山からは、活火山のように炎と煙が激しく上がり、鯨からは、豪快な潮吹きのように火花が吹き出します。

そして、お店の看板商品である線香花火は、とことん素材にこだわった一品。火薬には宮崎産の松煙(しょうえん)が、紙には福岡県八女市の手すき和紙が使われており、その和紙を草木染めで染色し、職人が一本一本ていねいに縒(よ)って作っています。和紙から透ける火薬の色と草木染めの柔らかい色合いがとても魅力的です。ワインのように「熟成」することで、やわらかく温かみのある火花に変化するそうなので、翌年までとっておくのも楽しみのひとつなのだとか。

コロナ禍になってから、なかなか大きな花火大会に参加できない日々が続いていますが、今年の夏は家族や友人とともに、メイド・イン・ジャパンの美しい花火で夏の思い出を作ってみてください。

目まぐるしく表情を変える線香花火の燃え方には、段階ごとに「蕾」→「牡丹」→「松葉」→「散り菊」と名前が付いている(写真提供:福岡県観光連盟)