冬はのどにとって厳しい季節です。のどは呼吸をしたときの空気の通リ道(呼吸器)であるばかりでなく、胃への飲食物の通り道(消化器)でもあり、さらには声を出す発声器でもあります。この季節、のどをもっと労わりませんか。
のどが乾燥すると異物を排除する働きが低下
のどは鼻腔から気管の始まりまでの部分をいいます。呼吸により口や鼻から取り入れた空気はのどを通り、気管を経て肺に入ります。その際、空気に混じっているホコリや粉じん、細菌、ウイルスなどの異物ものどや気管を通過してしまうと、人間の肺の中は異物だらけになってしまいます。
そこで、空気中の異物が肺に行かないように防御している組織の一つが、のどにある粘膜と線毛です。異物は粘膜の表面にある粘液でからめとられ、線毛によって痰として排出したり、食道から胃へ送られて胃液で処理されたりします。
空気が乾燥すると、のどの粘膜や線毛も乾燥し、さらには寒さも加わって、それらの働きが鈍くなります。そのため、冬にはのどのバリアが弱まり、異物が気管に進んだり、時には肺にまで侵入したりして炎症を起こすことがあります。また、のどの乾燥はイガイガなどの違和感や痛みをもたらします。
のどの潤いを保つ工夫を
のどの粘膜や線毛の乾燥を防ぐには、まず部屋を加湿することです。暖房器具を使っている間は、加湿器で室内の湿度を40~50%以上に保ちましょう。あるいは、湿ったバスタオルをハンガーにかけてつるすと、バスタオル全体から水分が蒸発し、湿度が高くなります。
水分を摂ることでも、のどの乾燥は防げます。1回の水分量は一口か二口で十分ですが、こまめに摂ることが大切です。
のどにイガイガなどの違和感があるときは、のど飴をなめるのも一案です。のど飴をなめると唾液の分泌量が増え、のどの粘膜や線毛を潤してくれます。
うがいもまた唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促します。のどを潤すだけでなく、のどの筋力を鍛えることができ、食べ物が飲み込みやすくなり、誤嚥防止にも役立ちます。
口呼吸をするとのどが乾燥しやすくなるので、鼻呼吸を心がけましょう。鼻腔にも粘膜があり、鼻に入ってきた空気を温めたり湿り気を与えたりする働きをしています。
薬の副作用がのどの渇きをもたらすことも
のどの乾燥は空気の乾燥が原因とは限りません。薬を服用している場合は、その薬の副作用でのどの乾燥がもたらされているのかもしれません。実際、のどや口の乾燥を招く薬は約700種類もあるといわれます。
また、のどの違和感や痛みがまれに下咽頭(かいんとう)がんや急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)といった大きな病気のサインであることもあります。
のどの乾燥や違和感、痛みなどが気になるときは、気軽に薬剤師におたずねください。
イラストレーション:堺直子
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