まちの薬局つれづれ日記 白澤薬局(兵庫県)vol.3

日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。class A 薬局の仲間で、白澤薬局段上店(兵庫県西宮市)薬剤師の金光伴訓さんがお届けします。


『モンティホール・ジレンマ』

明けましておめでとうございます。

年末年始をお過ごしのなか、少しお休みさせた頭を働かせていただこうと、今回あるクイズをお出しします。

みなさま、考えてみてください。

閉まった3つのドアの一つに当たりが入っています。あなたが一つのドアを選択した後、司会者が残りのドアのうちハズレを1つ開けます。そこで司会者は、「最初に選んだドアを残っているドアと変えてもよい」と話します。あなたはドアを変更した方が良いのでしょうか?

ギネスブックに、「IQ228」を有する天才として認定されたマリリン・ボス・サバントは、論理・哲学・数学から人生相談まで、さまざまな読者からの質問に答えるコラム「マリリンに訊く(Ask Marilyn)」を米・日曜新聞雑誌『PARADE』に連載していました。

このコラムに、上記の問題が投稿され、サバントは「正解はドアを変更するであり、ドアを変更した場合は当たりを選ぶ確率は、変更しない確率より2倍高い」と回答しました。

掲載直後から「彼女は間違っている」と約1万通の投書が寄せられ、更に数学者までもが「間違っている」と異を唱え、大論争になりました。


さて、あなたはどのように考えられましたか?

ハズレを1つ開けたので、当たりは残りのドア2つに1つ。ドアを変えても確率は2分の1なので、変えても変えなくても同じと考えられたでしょうか? 私も直感的にそう考えました。

しかし、ある数学者がPCでこの問題を数百回シミュレーションしてみると、結果はサバントの答えと同じ「変更した方が、2倍の確率で高い」との結果が出ました。

実はこの問題は、元々モンティ・ホールという人物が司会を務める、アメリカのTV番組で取り上げられた問題で、「モンティホール・ジレンマ」と呼ばれ、確率論の代表的問題とされています。数学的に解くと、ベイズの公式を利用し、最初のドアが当たりの確率は1/3に対し、残りのドアの当たる確率は2/3と計算でき、まさにサバントの意見が証明されます。

直感と理論が乖離することはたびたびあります。今年は調剤・介護報酬の同時改定が行われ、経営上の対策などを考えることも多くなりそうです。その際、直感だけでなく、異なった発想で考えてみることも役に立つのではないでしょうか。


text by 金光伴訓(かなみつ・とものり)

経済学部社会政策科卒。一般企業企画開発室を経て、薬学部へ社会人入学。在宅医療に取り組む中、社会福祉審議会で福祉医療計画策定に取り組んでいる。趣味は、映画・演劇・落語からラグビー・合気道と幅広い。