日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。class A 薬局の仲間で、白澤薬局段上店(兵庫県西宮市)薬剤師の金光伴訓さんがお届けします。
『スマホが動かない!!』
4月のある朝、起きがけに枕元に置いてあるiPhoneの画面をタッチした。いつもなら出るはずの待ち受け画面が一向に出ない。
「あれ?」
やおら起き上がり、充電器に繋がれていることを確認し、今度は電源を押す。やっぱり画面は真っ黒のままだ。今度は頭の中が真っ白になった。が、すぐに頭が働きだし、『スマホが使えないということは、これは電話が使えない。いやいや、電話帳が吹っ飛ぶから、仕事の電話ができないぞ』と告げてきた。暑くもないのに汗が出てきた。『まずいぞ。非常にまずい!』
仕事場に出向くと、管理薬剤師にあらましを話し、携帯ショップに連絡する。事情を説明しても、今はショップへの訪問も予約の世界。すぐに対応できないと告げられたが、「ええい、ままよ」といきなりショップに出向くことにした。訪れて、店舗スタッフに状況を話したら、「今は予約が少ないので、どうぞこちらへ」と席を勧められた。店舗でも状態を確認するため、充電器に繋げ、電源を押す。依然画面は真っ暗のままだ。
「これは電源ボタンが壊れているようですね。使えるようにするには、3つの方法があります。1つは補償を使って、同じ機種の新品を数日後に無料で手に入れること。2つめは新機種を新たに買うことです。但し、いずれも電話帳がバックアップされていないと、戻る可能性はありません。最後はこのスマホをアップルに持ち込み、技術者に調べてもらうことです。どうです? 技術者にここから連絡してみますか?」
お願いして連絡を取ったが、修理に1週間かかり、電話帳が戻る確証はないという。どの方法をとっても電話帳の条件が同じなら、早く手に入れるのが一番。かくして新品をこの場で購入することにした。手に入れた新品を店舗内で動かしてみる。電話帳の連絡先のタブを恐る恐る押すと、全ての連絡先が表示された。スタッフが叫ぶ。「おめでとうございます!」
改正された調剤報酬の連携強化加算や医療DX加算の算定要件に、サイバーセキュリティの義務化が記載されている。もしレセコンが、電子薬歴が突然動かなくなったらどうするか。厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を見ていると、進む医療のDXについて、薬局も十分対応が必要なのだと改めて認識させられる。
後日譚:2日後に壊れたスマホの電源を入れてみた。ふわっと待ち受け画面が現れた。「あれ?」
text by 金光伴訓(かなみつ・とものり)
経済学部社会政策科卒。一般企業企画開発室を経て、薬学部へ社会人入学。在宅医療に取り組む中、社会福祉審議会で福祉医療計画策定に取り組んでいる。趣味は、映画・演劇・落語からラグビー・合気道と幅広い。
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