イラストレーション:堺直子
血圧が高い状態を放置すると、脳卒中や心不全などが起こりやすくなります。高血圧の発症には生活習慣が関連していますが、中でも塩分のとりすぎは血圧を大きく左右することがわかっています。あなたは塩分、とりすぎていませんか。
減塩は脳卒中や心不全などの予防にも有効
塩分をとりすぎると血圧が上がるのはなぜでしょう。それには、ホメオスタシスという、私たちの体内環境を一定に保とうとする仕組みが関わっています。
塩分をとりすぎると、血液中の塩分濃度が上がります。そこで働くのがホメオスタシスで、血液中に水分を取り込むことで、上がった塩分濃度を一定にまで下げようとします。その結果、血液量が多くなり、血管にかかる圧(血圧)が高くなるのです。
逆にいえば、減塩を長く続ければ、血圧の上昇を抑えることができるということです。それだけでなく、減塩は降圧薬の効きをよくすることもわかっています。さらに、脳卒中や心不全、腎疾患などの発症リスクの低減にも役立ちます。
徐々に塩分を減らしていくのが継続のコツ
「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、成人の1日の食塩摂取の目標量は男性7.5g未満、女性6.5g未満となっています。高血圧の人はこれらよりも低い6g未満が目標量です。しかし、実際の摂取量は、男性10.9g、女性9.3g(厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」)と、目標量をかなり上回っています。
減塩の効果は長く続けてこそ得られます。そのためには、急激に減塩するのではなく、少しずつ塩分を減らしていき、舌を薄味に慣れさせることです。特に高齢者の場合、急に減塩すると脳梗塞を起こすおそれがあるので注意が必要です。
塩分を減らすのにおすすめなのが加工食品を控えること。ちくわやかまぼこなどの練り物、ハム、ソーセージ、魚の干物、漬物、つくだ煮などには、思いのほか塩分が多く含まれています。これらをとらないようにするだけでも食塩摂取量はかなり違ってきます。
しょうゆやソースなどの調味料から摂取する塩分を減らすこともポイントです。例えば食卓では容器から直接、料理にかけると必要以上に多く使いがち。適量を小皿に取るようにしましょう。
最近は、さまざまなおいしい減塩調味料や減塩食品が出ています。それらを上手に利用するのもよい方法です。
血圧降下に役立つ栄養素も積極的にとって
塩分を減らすとともに、血圧を下げる働きのある栄養素を積極的にとることも大切です。ナトリウムの排泄を促すカリウムや、血管の収縮を抑えるマグネシウムなどです。カリウムは昆布やほうれん草などに、マグネシウムは納豆や煮干しなどに多く含まれます。なお、カリウムの摂取については腎臓病の人は必ず医師に相談しましょう。
減塩についてわからないことがあれば薬剤師に気軽におたずねください。
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