気を付けよう、身近な依存症

イラストレーション:堺直子


依存症というと覚せい剤などの不正薬物を思い浮かべるかもしれませんが、実はもっと身近なところにも依存性があるものがあります。自分では気づかないうちに依存している場合があるので注意しましょう。


禁煙が容易ではないのはニコチン依存が原因

米国の作家マーク・トゥエインがふざけ半分で「禁煙なんて簡単。私はもう何千回も禁煙した」と言ったとか。この言葉からわかるのは、禁煙を成功させることがいかに難しいかということです。この困難をもたらしているのは、タバコの葉や煙に含まれるニコチンです。ニコチンは覚せい剤と同じように非常に強い依存性がある成分です。禁煙を始めると、3日後ぐらいにイライラや頭痛、不安感、体のだるさなどの禁断症状がひどくなります。これは体からニコチンが抜け出すときに起こる症状です。この時期を乗り越えられるかどうかがニコチン依存症脱出のカギとなります。

自分の意志だけでは禁煙が難しいときは、医療機関の禁煙外来などを利用しましょう。ニコチン依存症と診断されるなどの条件を満たせば、公的医療保険が適用されます。


アルコールやカフェイン入り飲料は控えめに

ニコチンと同じくらい強い依存性があるのがアルコールです。眠れないからと寝酒をしていると、最初は眠れても、脳が徐々にアルコールに慣れてきて、以前と同じ量では寝られなくなり、飲む量が増えていきます。すると、またその量に脳が慣れてしまい、摂取量をさらに増やすという悪循環に陥ります。アルコール依存症から回復するための唯一の方法は断酒ですが、自分の意志だけで取り組むのはかなり困難です。アルコール依存症の専門的な治療を行っている医療機関を受診したり、自助グループに参加したりするのがよいでしょう。

カフェイン入りの飲料にも注意が必要です。特に近年、問題になっているのが眠気覚ましなどをうたったエナジードリンクです。多くのカフェインが含まれているうえ、砂糖などで苦みが隠されているため口当たりがよく、1日に何本も飲んでしまいがちです。しかし体が効果に慣れると、摂取量を増やさないと同じ効果が得られなくなります。カフェインを過剰に摂取し、中枢神経系が過剰に刺激されると、体にさまざまな悪影響を与えることがわかっていて、国際機関や一部の国ではカフェインの摂取基準量が定められています。例えば、カナダ保健省では健康な成人で400mg/日(コーヒーをマグカップ〈237ml〉で約3杯)までとしています。エナジードリンクの中には、缶や瓶1本あたりコーヒー2杯分のカフェインを含むものもあるので、1日に何本も飲まないようにしましょう。


市販薬の乱用は厳禁。用法・用量を守って

薬局やドラッグストアなどで入手できるOTC医薬品(市販薬)の中には乱用すると薬物依存になる成分を含むものがあります。一部の咳止めやカゼ薬、解熱鎮痛薬、鎮静薬などです。

該当する薬を購入する場合は、必ず薬剤師や登録販売者から説明を受け、用法・用量を守りましょう。また、本来の目的以外では絶対に使用してはいけません。なお、身近なものの依存性についてわからないことがあるときは薬剤師に気軽におたずねください。